別冊クリナリオ|ワインエッセー 青野亜希子











ニースの料理

ニースは、マルセイユと並ぶ南フランスの2大都市の一つ。

まぶしい太陽と、濃紺の海が印象的で、ヴァカンス中の避暑地としてのイメージが強いですが実際街を歩くと、リゾート地しての華やかな面と、日常を感じる庶民的な面が共存する魅力に気づきます。

いずれもたくさんの人で賑わっていますが、やはり旧市街の様子は見ごたえがあります。

狭い通り沿いの店先では、いろいろな種類のピザや、ソッカ(ヒヨコ豆の粉をベースにした、クレープのようなもの)、ベーニェ(てんぷらによく似た揚げ物)など、手軽に食べられるものを売っていて、地元の人や観光客が、入れ替わり立ち代わり店の人とやり取りしている様子は、とても活気に溢れています。

一方レストランでは、ニースの漁港で採れた新鮮な魚介や、色とりどりの野菜を使った、ボリュームたっぷりの料理が出されていて、何人かで料理を囲むテーブルは、会話と笑顔で溢れています。


L'escalinada

街歩きの途中、とても賑わっている様子に思わず入ってみたレストラン、
L'escalinada
22 rue Rairoliere Vieux Nice
04 93 62 11 7


Beignet de fleur de courgette(花ズッキーニのベーニェ)と、フランスでは一般的な食材ウサギを使った、Lapin saute a l'ail et pate sauce pistou(うさぎのソテーニンニク風味 ピストゥを絡めたパスタ)をいただきました。

ズッキーニもウサギも、歯ごたえがしっかりあって旨みが強く、食べ飽きるということはないのですが、うさぎの付け合せのパスタもあわせるとすごいボリューム。

目の前の料理と、一人で格闘してる私を見て、周りの人たちは「おお、すごいね」と言わんばかりに目を丸くしてました・・・。


ピサラディエール

今回紹介するPissaladiere(ピサラディエール)は、パンのような発酵生地に、『ピサラ*』といわれるプロヴァンスの香辛料を塗り、その上に、十分に甘みが出るまで炒めた玉ねぎを載せ焼き上げたもの。

ソッカやベーニェ同様、気軽につまめるとてもポピュラーで庶民的な料理です。

*ピサラ・・・アンチョビのピュレ、オリーブ油を混ぜ合わせたもの

今回は発酵生地で作りましたが、前回キッシュでご紹介したタルト生地を使うと、もっと簡単で、いろいろな形にもできるのでおすすめです。
小ぶりにすれば、料理が出揃うまでの間の、食前のおつまみとして提供することもできます。


CIMG0664.JPG

<材料>
・発酵生地
-薄力粉もしくは準強力粉 200g
*薄力粉と強力粉を半々にしてもOKです。
-塩 一つまみ
-砂糖 10g
-バター 65g
-生イースト 10g
*ドライイーストなら4g程度
-牛乳 30g
-卵 1.5個

・玉ねぎ 3個分(500gくらい)
・タイム、ローリエ
・にんにく 1片
・アンチョビ 適量
*日本ではピサラは手に入らないので、アンチョビやアンチョビペーストで代用します。
・オリーブ 適量
・オリーブオイル
・塩、こしょう

<下準備>
・生イーストは、人肌(30℃くらい)に温めた牛乳に入れ、少し置いておきます。
・粉、砂糖、塩を混ぜ合わせておきます。
・バターは1cm角に切って冷やしておきます。
・卵はときほぐしておきます。
・玉ねぎは薄切りに、にんにくはみじん切りにしておきます。
・塩漬けのアンチョビの場合は少し牛乳に浸しておきます。
・オリーブは輪切りにしておきます。
・オーブンは200℃に余熱しておきます。

<作り方>
①鍋にオリーブオイルを入れ弱火にかけ、ニンニク、玉ねぎ、タイム、ローリエを加え炒めます。
②合わせておいた粉に、バターを入れて細かくつぶしながら生地となじませます。
③②の粉に、牛乳、生イースト、卵をあわせたものを加え、粉気がなくなるよう混ぜます。
④③を台の上に出して、生地を台にたたきつけながら滑らかにしていきます(10分位)。
⑤生地が切れず、まとまりが出てきたら丸くまとめてラップをし、冷蔵庫で30分程休ませます。
⑥休ませた生地を取り出し、1mm弱に薄く伸ばしたら天板に乗せてもう一度冷蔵庫で休ませます。
⑦炒めておいた玉ねぎが色づいたら取り出し、粗熱をとっておきます。
⑧⑥の生地に、アンチョビペーストを薄く塗り、その上に⑦の玉ねぎを乗せます。
⑨オリーブを乗せ、オリーブオイルを全体にかけたら、オーブンで20分程焼き上げます。
⑩きれいな焼き色がついたら取り出し、仕上げに挽きたてのこしょうをかけていただきます。


今日のワイン

今回合わせてみたのは、イタリアのスプマンテ。
スプマンテはスパークリングワインのイタリアでの呼称です。

立秋を過ぎても暑い日が続く、こんな時期なので、涼しげな口当たりの1杯を合わせました。

Santero Pinot Chardonnay Spumante

このワインを作るサンテロ社は、創業50年を超える、今ではイタリアを代表するワインメーカーです。
日本でも多くの製品が流通しているので、一度はサンテロ社のワインを目にされたことがあるのではないでしょうか。

中でもこのワインは、ピノ・ブランとシャルドネを50%ずつ使用し、シャルマ方式といわれる、密閉タンク内で泡を発生させる方法で二次発酵を行います。

きめ細かい泡が口当たりよく、フレッシュでくせのない、辛口のすっきりとした味わいは、このピサラディエールや、魚介類の前菜、野菜や魚介のてんぷらなどにも合わせていただけると思います。

たまにはビールの代わりにいかがでしょうか?


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スプマンテ





青野亜希子 あおのあきこ
料理家 エッセイスト
エコールキュリネール国立(現エコール辻)フランス・イタリア料理専門カレッジ卒。
ル・コルドンブルー料理ディプロム取得、銀座レストラン・ロオジェにて研修。
現在、料理教室開設に向けて準備中。