別冊クリナリオ|イタリアの食材とワイン 池田美幸














リゾットを作ろうとして、慌ていてお米を床に落としてしまった。
箒で集めたお米は30グラム・・・・捨てるしかない。
被災地で水もない、食料もない、寒さと戦っている人たちのことを考えると、ゴミ箱に捨てる手が震えた・・・・

イタリアはヨーロッパ一の米の産地である。その大半は北イタリアの水田で作られる。

陸稲も存在するが、アルプスの麓では、水田で作る方が遅霜の危険が少ない。種類はジャポニカ種。要は日本米。細長いインディカ種も育ててはいるが、こちらはお米を茹でて付け合わせとして食べる近郊の国々に輸出している。

このジャポニカ種はでんぷん質を多く含むので、リゾットにむいている。本物のリゾットを食べた方ならご存知かと思うが、リゾットはパサパサしたものではなく、でんぷん質からの粘り気がなければいけない。

米粒は丸くて長めである。その長さによって、米のカテゴリーが分かれる。よくパスタでアル・デンテという言葉を耳にするが、それはちょっと硬めに茹でた状態を表すが、この“硬め”ということはリゾットにおいても大事。ということは米粒が長いほうが、煮え切ってしまわず、硬めにできるのである。リゾットに一番向いているのは、スーぺルフィーノと呼ばれているタイプで、米の長さが6,4ミリ以上と定められている。この中には、カルナローリ米やアルボーリオ米が含まれる。

リゾットを作るときは、少し深めの鍋に、まずオリーブオイルかバターで玉ねぎ、好みでニンニクを炒め、その後すぐお米を加える。

そう言えば、以前日本のご飯を用意しようと思ってお米を洗っていたら、傍にいたイタリア人が、“お米が汚れているの? なぜ洗っているの?”と聞かれたことがあったっけ。

リゾットを作るとき、お米は洗わずそのまま使う。
お米を加えたら、火を強くし手早く炒め、白ワインを加え、さらに火を強くしてアルコール分を飛ばす。そこに用意しておいた熱々のスープストックを徐々に加え、時々かき混ぜながら20分。最後に火を止め、バターとパルミジャーノ・レッジャーノを加え、ふたをして5分ほど待ったら出来上がり!出来上がった時には水分が残っていてはいけない。

これは本当にシンプルなリゾット。いろいろなバリエーションがある。春先なら旬のグリンピースやアスパラで、夏はシーフード、秋はキノコ、冬はかぼちゃやアーティチョーク。ちょっと目先を変えて、洋ナシとチーズ、一時イチゴのリゾットが流行ったこともあった。白ワインではなく、バローロのようなフルボディーな赤ワインとスープでの込んだリゾットも酸味があって美味しいものである。

ここ、ミラノの名物はサフランを入れた黄色のリゾット。サフランは昔、大変貴重なものだったから、貴族たちの結婚式の披露宴で使われることが多かった。又、出来上がった黄色いリゾットは、金色に近いので、より豪華なイメージを作り上げたといわれる。

でも豪華、と言うならそれはやはり、白トリフを薄くスライスして載せたリゾットであろう。

というわけで、それぞれの材料に合わせて、ワインを選ぶ。ミラノ風のリゾットなら、ミラノ南部で作られる微発泡のボナルダ、シーフードならイタリアを代表するスパークリングワイン、フランチャコルタ。きのこやバローロワインのリゾットなら、どっしりしたバルバレスコやバローロをお勧めしたい。







池田美幸 いけだみゆき
通訳者、翻訳者。イタリアミラノ在住。
イタリアに留学、イタリアの食文化を学ぶ。その後、イタリアでソムリエ、オフィシャルテースター、チーズテースターなどの資格を取得。現在、食・ワインに関わるコーディネート、通訳、翻訳を行う。
本誌「ワイン翻訳」でもおなじみ。

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