別冊クリナリオ|イタリアの食材とワイン 池田美幸














日本で紅葉が見頃になり始める時期、イタリアの食通が待ち受けているものがある・・・


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イタリア産白トリフ

トリフ(トリュフ truffe)は世界三大珍味の一つとして知られるが、イタリアで採れるこの白トリフは、よく知られる黒トリフの何倍もの値段がする大変貴重なものである。

どのくらい貴重なものかは、イタリア各地でこの時期、白トリフの市やオークションが開かれることでもわかる。2010年の12月、ローマでのオークションでは900グラムの白トリフが史上最高の33万ドルで入札された。

ピエモンテ州(2006年に冬季オリンピックが開催されたトリノが州都)のアルバの町の白トリフが世界中で一番有名ではあるが、トスカーナやウンブリア、マルケ、アブルッツィオ州でも採れる。調査したところによると、クロアチア、セルビア、スロバキア、スイスでも採れるようではあるが。

収穫解禁

ピエモンテ州ではこの白トリフの収穫解禁時期が、毎年9月15日から翌年の1月31日までと定められている。

トゥリフォラゥと呼ばれるトリフ採りの人が犬を使って探す。フランスの黒トリフは豚が探すので知られるが、豚はトリフを食べてしまうので、イタリアでは犬を使う。

明け方、まだ暗闇の中、トゥリフォラゥは愛犬と共に懐中電灯を持って林へ向かう。
なぜ暗いうちに???と思うかもしれない。

明るかったり、車が通ったりすると犬の集中力が欠けるし、だいたい同じ木の下に生えるので、ライバルのトゥリフォラゥに悟られないためである。

白トリフは、オーク(ナラ)、ポプラ、菩提樹、ヤナギ、カバノキ、へーゼルナッツの木の根に寄生する、地中に育つキノコの一種である。

その魅力

では、この白トリフ、どのような様相をしているか、と言うと、白っぽい球状で、日本の松露によく似ている。5グラムほどのものもあれば1キロぐらいになることもある。

魅力はその香りである。表現しづらい香りであるが、しいて言えば、キノコ、干し草、ニンニク、湿った土、スパイス、アンモニア、醗酵臭、と言ったところ。

すでに古代ローマ人たちは、トリフを珍味として評価していたと言われ、古代ギリシャの哲学者プルタルコスは、トリフは水と熱と雷からの賜物と語り、後の詩人たちは、聖なる木と信じられていたオークの木の近くに、ギリシャ神話の神、ゼウスが落とした雷の産物である、と語った。じつは女性好きだったゼウス・・・つまり、この白トリフには催淫効果があることでも知られる。

1700年代にはヨーロッパの宮廷の美食家の間で、とりわけ珍重された食品の一つになった。オペラ作曲家のロッシーニは、キノコのモーツアルト、と言及したくらいである。

2010年の白トリフ

今年、2010年は白トリフの当たり年!

アルバの町では、100g当たり200ユーロ前後で購入できる。これは、あくまでも大きさが20gほどの平均価格で、大きくなればなるほど稀少価値が上がるので、グラム当たりの値段も高くなる。

さあ、白トリフを手にした貴方!
ちょっと待って! トリフ削りは?
そう! 白トリフを楽しむためには専用のトリフスライサーが必要。

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成分の8割以上は水分なので収穫後10日以内には食べることがお勧め。バターで合えた、熱々の細いタリアテッレ(ピエモンテの地元ではタリアリンと呼ぶ)の上に、または半熟のポーチドエッグに・・・

要はあまり味のないものと合わせるのがベター。
家中が白トリフの香りに包まれる・・・。


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似合いのワイン

こんな贅沢な食卓には、やはり贅沢なワインを。

地元ピエモンテの王様のワイン、そしてワインの王様と称賛されるバローロ、バローロと同じネッビオーロブドウから造られる隣村のワインで少し優しい口当たりのバルバレスコトスカーナ好きな方にはブルネッロ・ディ・モンタルチーノ

いずれにせよ、10年ほど寝かした2000年前後のビンテージが、タンニンもまろやかになっているので白トリフをより楽しめる。

さあ、貴方も素敵なイタリアの夕べを・・・・









池田美幸 いけだみゆき
通訳者、翻訳者。イタリアミラノ在住。
イタリアに留学、イタリアの食文化を学ぶ。その後、イタリアでソムリエ、オフィシャルテースター、チーズテースターなどの資格を取得。現在、食・ワインに関わるコーディネート、通訳、翻訳を行う。
本誌「ワイン翻訳」でもおなじみ。

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