別冊クリナリオ|イタリアの食材とワイン 池田美幸













この夏、イタリアも暑い

この猛暑・・・やっぱり食べたくなるのがジェラート。

私が小さい頃は、アイスクリームと呼ばれていたのに、いつの間にかジェラートと言っても通じるようになった・・・

ジェラートはイタリア語である。凍らせるという動詞ジェラーレから来ている。いつから日本でジェラートと言う言葉が定着したかはわからないが、ジェラートのストーリーを探ってみよう・・・

イタリアのジェラート.JPG



ジェラートの起源

紀元前500年頃には、すでに中国やインドで、冬の氷を使って食べ物を保存するという知恵が生まれていたといわれる。エジプト人、アラブ人、そして古代ローマ帝国の人々は冬の氷や残雪を使って、真夏、絞ったオレンジやレモンに蜂蜜を加えたものを食べる習慣があった。

シャーベットのようなものであったに違いない。古代ローマの政治家であり、食通としても知られる紀元後1世紀に活躍したプリニウスがそのレシピを書き残している。
ジェラートにより近いものの登場は、ルネッサンス時代16世紀になる。

メディチ家が栄えるフィレンツェの町に生まれ育ったベルナルド・ブオンタレンティ(1536~1608)は建築家、工学士、またアートディレクターとしても活躍した才人であった。彼は、フィレンツェの町中に氷室を作ることに成功した。メディチ家が催す晩餐会のセッティングを任されていた彼は、晩餐会の最後を締めくくる一皿として、ミルク、生クリーム、卵黄、蜂蜜と氷を混ぜ合わせデザートを用意し、人々を驚かせた。これが今のジェラートの原点と言われている。

有名なカテリーナ・ディ・メディチは、アンリー2世との披露宴の時、イタリアから菓子職人を連れて行き、ジェラートを用意させ評判になった。

1686年にはシチリアのパレルモ出身のフランチェスコ・プロコーピオ・デイ・コルテッリがパリにカフェ・デ・プロコーぺをオープンし、シチリア菓子やシャーベット、ジェラートを売り、一躍ヨーロッパでジェラートが評判になった。数多くの知識人、有名人がこのカフェの常連客であったと言われる。経営者こそ変わったが、このカフェは、今でもパリで一番歴史のあるカフェとして存在する。残念ながら、もう昔の面影はない。

ル・プロコープ Le Procope
住所 13 rue de l'Ancienne Comedie - 75006 Paris


ジェラートはワインに合うか

アメリカにジェラートを広めたのも、イタリア人である。
18世紀末、イタリア人フィリッポ・レンツィはアメリカに初めてジェラテリーア(アイスクリーム屋)をオープンさせた。

夏ともなると、イタリアでは老いも若きも、男性もジェラートを片手に散策する姿が目に付く。こちらに来たばかりの頃は、年配の男性が歩きながらジェラートをうれしそうに食べているのを見て不思議に思ったものだった。
大量生産されるジェラートは夏のスーパーの目玉商品だけど、それぞれの町には、こだわりの職人気質のジェラテリーアが存在する。

ジェラテリーア.JPG

そして最近人気なのは、家庭で作れるアイスクリームメーカー。
我が家でも購入。
自家製は、材料にこだわれるし、出来立てを楽しめるのが魅力。
でも、ジェラテリーアだと、いろんな種類のジェラートがいっぺんに食べられるから、やっぱり捨てがたい。

シチリアでは、クロワッサンに挟んだジェラートも有名だし、バニラ風味のジェラートの上に熱々のエスプレッソをかけたアッフォガート・アル・カッフェもイタリアならではのジェラートの食べ方と言える。

そして、このジェラートにどんなワインを合わせるか・・・本音を言おう。
ジェラートに合うワインはない。ジェラートは冷たすぎて口の中の間隔を麻痺させてしまうから、ワインには合わない。
まあ、こう暑いとワインは、秋涼しくなるまでお預け・・・にしておこう!


アイスクリームメーカー.JPG






池田美幸 いけだみゆき
通訳者、翻訳者。イタリアミラノ在住。
イタリアに留学、イタリアの食文化を学ぶ。その後、イタリアでソムリエ、オフィシャルテースター、チーズテースターなどの資格を取得。現在、食・ワインに関わるコーディネート、通訳、翻訳を行う。
本誌「ワイン翻訳」でもおなじみである。