別冊クリナリオ|イタリアの食材とワイン 池田美幸













イタリアの復活祭

イタリアではクリスマスと並んで重要な復活祭。十字架に磔になったキリストが復活した日。磔になったのが金曜日、そして復活祭はその2日後、日曜日と決まっている。

カーニバルから復活祭までの四旬節と呼ばれる46日間は、キリスト教徒は肉を食べることが禁じられていた。肉だけではなく、卵、牛乳、チーズまで食べてはいけないと決められていた時代もあった。

その四旬祭がようやく終わり、春の到来を祝いつつキリストの復活を喜びあうこの日は、子羊を食べる習慣がある。子羊はキリストの犠牲、そして復活のシンボルであり、イエス・キリストは、よく子羊に例えられる。

この46日間、いまだに肉を食べない人は、もう一握りしかいないであろう。少なくとも私はそんな人に出会ったことはない。


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のこのこ復活祭前日の土曜日の午後4時、行きつけの肉屋に行ったら、子羊は350グラムしか残っていなかった。
仕方がない・・・あるだけ買った。

日本では、北海道のジンギスカンを除くと、子羊(ラム)を食べる習慣はあまりないかと思う。関東地方だと肉屋でたまに出会ってもニュージーランド産が多い。

復活祭のお昼ごはん

牛肉のミートソースではなく、子羊のミートソースであえたパスタ。

セカンド(メイン料理)は、シンプルに、乳のみのラムチョップのグリル焼き。これは、スコッタディート(指を火傷するという意味で、熱々のうちに食べる)と呼ばれるローマの有名な郷土料理。

ローマでは、乳のみの子羊のことをアッバッキオと呼ぶ。子羊を屠殺するときに使った棒、バッキオが語源と言われる。

ラムはレアで食べたほうがやわらかくて美味しい。
丸ごとのラムを半身にし、豪快にオーブンでグリルして、集まった家族・親せき一同で分け合うのも、皆が集まる復活祭ならでは! 

ミントを添えれば、におい消しになる。
ラムチョップに衣をつけて揚げたのも美味しい。
ここにはレモンを添えよう。
ラムの骨付きのモモのローストも捨てがたい。
臭み消しにローズマリーが良くあう。

ラムではなく、子ヤギを食べる地域もある。
ミラノあたりでは、子ヤギのほうが値段はいくらか高くなる。
子ヤギのほうが味に、より癖がある。

羊料理には赤ワイン

子羊、子ヤギ料理にはやっぱり赤ワイン! とは言ってもどっしりしすぎたワインでは、乳のみの肉の味わいを消してしまう。
さらっとした飲み心地の赤はどうだろう?

南イタリアだったら、カリフォルニアのジンファンデルと同一品種である、と言うよりは生みの親であるプリミティーヴォや、きめの細かいタンニンが魅力的なバジリカータ州のアリアーニコ・デル・ヴルトゥレ。

数年物のキャンティー・クラッシコ。ネッビオーロ種が好きな人には、バローロやバルバレスコではなく、少し軽めのミラノの北のヴァルテッリーナ・スーペリオーレをお勧めしたい。

でも、定番はサルデーニアのカンノナーウという赤ワイン。スペインから入ってきたブドウと言われており、フルーティーさが魅力だ。

そう言えば、初めてサルデーニアに行った時、飛行場からホテルまでのタクシーで、運ちゃんがこの島には、人間より、羊のほうが多いんだ、って自慢そうに話してくれたっけ・・・。

あの時は、それがどうしたのって思ったけど、羊の島、サルデーニアは、羊料理が有名、そこにはやっぱり地元のワイン。

脂が乗った冬が旬

いずれにせよ、世の中うまくできているもので、子羊も子ヤギもちょうど今の時期に生まれる。
早い話が(残酷な話が??)、冬が食べごろなのである。

そして・・・牛や豚を絞めたら、いくら大家族であれ、親戚が集まってきたとしても食べきれない。冷蔵庫がなかった時代、食べきれなかったら、生ハムやサラミにして保存しなければいけなかった。

でもハムやサラミには、脂が乗った冬の肉のほうが美味しいし、外の気温も低いから傷む心配もなく、ゆっくり作業ができたのだ。
昔の人は賢かった・・・。


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池田美幸 いけだみゆき
通訳者、翻訳者。イタリアミラノ在住。
イタリアに留学、イタリアの食文化を学ぶ。その後、イタリアでソムリエ、オフィシャルテースター、チーズテースターなどの資格を取得。現在、食・ワインに関わるコーディネート、通訳、翻訳を行う。
本誌「ワイン翻訳」でもおなじみである。